逃げろ、逃げろ、逃げきるんだ!!    「ニコニコ笑っている人には来ない」つて? バカにするのもいい加減しろ! 放射能は悪魔だぞ‐

 

 フクシマを追ってきた私は、当初から放射能まみれになった土地から逃げろ!と叫んできた。原発爆発から5年たった今だって、遅くはない、放射能の地から逃げろ!! 専門家も行政も責任は取らない! だから逃げろ!!!  

 

 今年1月、念願の井戸川克隆氏(福島県双葉町前町長)の話を聞く機会を得た。加須市(埼玉県)で行われた講演会である。

 個人で避難した人はたくさんいたけれど、自治体として避難したのは双葉町だけであった。その双葉町を引っ張ったのが前町長・井戸川克隆である。江戸時代なら一揆になっても逃散(ちょうさん)になってもおかしくない事態が、フクシマ事件だった。それなのに自治体として避難したのは、双葉町だけだった。それはどうしてか? この辺の事情は、『なぜわたしは町民を埼玉に避難させたのか』(駒草出版、15・4・21 初版発行)に詳しい。一読されることをお薦めしたい。

 ところで、かつて私は、フクシマ事件が「原発立地自治体という概念を喪失」させたと指摘した(465号)。放射能によって土地が汚され、健康が侵されていくのは、原発立地体だけではない。はるかに広域である。だから原発の再稼働に際しては、全住民投票により了解を得なければならないと、私は思っている。

 だが、川内原発(九州電力)でも高浜原発(関西電力)でも、あいかわらず「立地自治体」に給付金を「ほどこし」て、現ナマで再稼働させる手法が踏襲されている。旧態依然なのだ。井戸川氏には、この辺の話も聞きたかったが、時間がなかった。 

 

小児甲状腺がん150人超に

 

 昨年11月30日、福島県民調査報告書は、小児甲状腺がんと診断された子どもたちは150人超になったと公表した。

 調査をしてきた福島県立医科大学は、当初から一貫して放射能との因果関係を認めていない。

 「放射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません。クヨクヨしてる人に来ます。酒飲みの方が幸か不幸か、放射線の影響少ないんですね」(H・3・21)--。こんなアホなことを言っだのは、甲状腺がんの権威、山下俊一。

 山下は、福島県知事・佐藤雄平(当時)から要請を受け、福島県放射線健康リスク管理アドバイザーになり、福島県立医大の副学長になった。彼の持論は、100ミリシーベルトの放射線を受けなければ大丈夫というものである。安定ヨウ素剤の服用をやめさせたのも山下であった。その山下が、フクシマは「世界最大の実験場」と発言していたことが分かった。また、この会議の中で、山下は、JCO事故を念頭に1ミリシーベルト以上の被ばくした人への生活補償や医療補償についても言及していたのである(H年5月1日、「健康管理調査スキームについての打ち合わせ」)。

 

 どんな微量な放射能だって、安全な値などないというのが、こんにちの放射線医学の常識と言ったのは児玉龍彦だったと記憶する。児玉は、H年7月27日、アイソトープ(放射性同位体)を医療目的で使用する専門家として衆議院厚生労働委員会に参考人として出席し、「放射線の健康への影響」について怒りを込めて、政府の対応を厳しく批判した。それは多くの人が覚えているはずだ。

 

 つまり山下は、100ミリシーベルト以上でなくても、健康被害が起こることを認識していたのではないか。だから、「福島県は世界最大の実験場」とみたのではないか。これは明らかに確信犯だ。コレを犯罪と呼ばずなんというべきか。

 

   無責任な帰還政策

  昨年11月21日に放映されたNHKスペシャル「東日本大震災追跡~原発事故のゴミ」は、今後の課題を示すよいテーマであった。だが、その締めくくりが悪すぎた。

 原発で得られた電力を享受してきた関東圏の人々は、「指定廃棄物」(放射性物筥を受け入れろ! というもので、いわば「1億総ざんげ」と同じ発想と思えた。

 今年1月23日、Nスぺは「原発事故5年ゼロからの″町再建″」を放映した。昨年9月、避難指示解除となった楢葉町の「町再建」の現状と課題を映し出していた。汚染された草や砂を入れたフレキシルコンテナ(フレコン)バッグなどは映し出されず、役場の担当職員が、企業と住民に「帰還」に走り回る姿を軸に編集されていた。いまやNHKは、「官報」なのだからと予想してはいたが……。

 安倍晋三のお友だち籾井勝人が会長(141)になる前、NHKは素晴らしい報道制作をしていたと思う。Nスぺの「報道の世紀」は、他局を寄せつけないものであった。11年5月に放映したチェルノブイリ事故を扱った「被曝の森はいま」(仏制作)もよかった。

 だが、3・11以来、フクシマの実相を映し出していたのは、海外の放送局であった。ドイツ国営テレビZDF「フクシマの嘘」、仏独共同の国営放送局制作の「フクシマー最悪事故の陰に潜む真実」は必見の映像である。今や私たちは、真実を知ろうとするために海外のメディアに頼らざるを得なくなった。

 

   子どもらを避難させよ

 

 年間被曝量20ミリシーベルト以下にするため、国・自治体はやみくもに「除染」した。  放射性物質がくっついた葉っぱや土なりを集めて、フレコンに詰めたのだった。ひどいところでは、汚染された土を地中に埋めてしまった。放射性物質は、土中に埋めようが、フレコンに詰めようが減ることはない。これらを燃やせば、減量はできても放射性物質が減るわけではない。濃縮されるだけである。焼却場で燃やせば、放射性物質は大気中に流れ、残りは濃縮された放射性物質の灰となるだけである。  政府の方針は、膨大な量のフレコンを各自治体で処理せよ、というものである。だが、仮置き場の契約は3年。この契約が、いずれ反故(ほご)にされるだろうと見こしてか、今年3月に期限が切れる南相馬市は仮置き場を「返還」することにした。賢い選択である。だいたい仮仮置き場として、公園や庭先にフレコンバッグが置かれている状況で、子連れで帰還しろ!なんて正気の沙汰ではない。  周知のように、放射性物質の中間保管場所として大熊町、双葉町が報じられているが、地権者の半分に連絡が取れないという。それでも強行するのが行政だ。フクシマ事件では、平然と法令違反をやってのけた。30年契約ということだが、そんなことをだれが信じよう。

 

   フクシマ事件から丸5年が

 

 今でも東電第一原発から放射性物質は、大気に海に垂れ流されている。そんな環境下に人が生活していいはずはないだろう。これまでも述べてきたけれど、いかなる事情があろうと子どもたちは、避難させた方がいい。東電はもちろん、国や自治体も責任を取らないからだ。こうした事態に裁判も起こされているが、琉球大学理学部で生物系を研究する大瀧丈二は、ヤマトシジミチョウの放射性物質による奇形を観察している。その論文には、放射能汚染したヤマトシジミに、汚染されていない葉を与えると、奇形が減少したと報告している。同じような報告は、『チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書』(13・5)でも述べられている。だから、子どもらを一刻も早く逃がすべきなのだ。

 (2・5)

 サトウ アトム