放射能汚染、その実態をみる

 

 フクシマ原発震災から2年が…

 

 今年2月(2013)、子どもの甲状腺がんが2人追加されて3人になった。さらに疑われる子ども7人がいることも報じられた(日経新聞ほか)。

 100万人に1人か2人といわれている小児甲状腺がんーー、これが38000人の子どもたちのなかから、3人が確定、7人が疑いありとされたのである。つまり、3800人に1人が、その疑いありとされたことになる。

 放射能汚染の最大の問題は、健康被害に尽きる。福島第1原発が爆発して放出した放射能(放射性物質、死の灰)を浴びてもいけないし、吸い込んでもいけない。とりわけ子どもたちは、感受性が強いからとくに注意が必要だった。

 甲状腺はヨウ素を蓄積させる。だから放射性ヨウ素による被ばくの前に、甲坊腺を安定ヨウ素でいっぱいにしておけば、放射性ヨウ素は排尿とともに体外へ排出されるという。これはチエルノブイリの時、ポーランドが実施して9割が成功していた。ウクライナ、ベラルーシでは配布・服用させていなかったから、小児甲状腺がんが爆発的に発症した。これは原発推進派ですら否定できない事実である。

 フクシマ原発が爆発した年の317日、仏外務省は、東京周辺在住のフランス人へヨウ素剤配布を始めた。米国務省も321日に始めた。だが福島12市町村でヨウ素剤を配布・服用をすすめたのは、たったの1自治体だけであった。私が住んでいる埼玉県でも、勤務地の東京でも配布していない。思えば、当時「安定ヨウ素剤」なる薬剤を知る人はほとんどいなかったのではないか。

 

 体内被曝がいちばん危険!

 

 昨年(2012)10月末、福島県農業総合センター(郡山市)は切り干し大根の2次汚染の実験を行なった。生の大根は放射能検出限界値以下であったが、干す場所によって最大で1キロ当たり3421ベクレルの放射性セシウムを検出したのである。原因は、空気中のチリやほこりにセシウムが付着したことが濃度を高めたと、センターは結論づけている。つまり山に降り注いだ放射能が、風や雨によってチリやほこりに付着して空気中を漂っているというのである。都市部を「除染」しても、再び高線量を記録した原因もここにある。だから「除染」を本格的に行うには、山林をすべて伐採しなければならないという主張がなされるゆえんである。

 ところで、矢ケ崎克馬(琉球大名誉教授)は、「空中を浮遊する放射性物質の塊は、いちばん大きなものでも直径が1000分の1ミリメートルです。ここにだいたい、1兆個ほどの原子が含まれています。これを飲み込むと、体内に、1兆個ほどの原子が集中して一点に入ってきて、このなかから放射線が出る」と述べ、体内被曝(内部被曝)の深刻さを提起していた(『内部被曝』、岩波ブックレット)。身体に取り込まれた放射性物質は、たとえ微量であっても放射線を出す。この放射線が細胞を傷つけDNAを破壊するという。したがって、放射性物質を多く体内に取り込めば、それだけのリスクとなる。

 そういえば、福島第一原発の作業員たちは、厳重な防護装備をしているが、これは外部被曝を防ぐためのものではない。放射性物質が全身にくっつくことを前提に、皮膚を外部にさらさないためのものである。皮膚にくっついた放射性物質がとれるまで身体を8回も洗い流した話を私はどこかで読んだ。放射性物質は、飲み込んでも吸い込んでもいけない。傷ついた皮膚を外にさらすなどもってのほかなのである。内部被曝の危険性を最も熟知しているのは東電であったろう。

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 他方、昨201212月、南相馬市の「野馬追の里健康マラソン大会」には、大人から小学生をふくめ2400人超の人々が参加した。南相馬は、放射能汚染された地である。市ホームページ掲載のコース線量地図では、1時間当たり最高071マイクロシーベルト(年6.2mSv)、最低0.2マイクロシーベルト(年18mSv)であり、いずれも年間1ミリシーベルトを超すとして行事の中止を「市民と科学者の内部被曝問題研究会」が提言したにもかかわらず、これが実施された。この楽天性、というより無防備性はどこからきているのかーー、一にも二にも放射能に対する情報不足からだろう。ヒトの五感でキャッチできない放射能ほど厄介なものはない。私たち一人ひとりは、放射能に対する知識を持たねばならないのである。

 原爆病患者に相対していた医師・肥田舜太郎は、「放射線障害に注射も薬も効きません」と言っていた。ということは、甲状腺にできた膿ほう、結節(しこり)の子どもたちは、経過観察するしかないのだろうか。甲状腺がんは、切除する以外の処方はないのだろうか。私には分からない。これらの子どもたちが、放射性ヨウ素を吸い込み摂取していたことが今の事態を起こしたことは紛れもないことだろう。とすれば、いまからでも汚染地からの集団避難を求めること、そして原発が爆発した以降の日記(行動記録、症状など)を記しておくことが重要となろう。

 フクシマは、過去の公害問題の比ではない。いずれ全国的にフクシマの健康被害裁判を起こすことになるだろう。そのとき日記は重要な証拠資料になる。白血病や倦怠感だけでなく、免疫力が低下するから鼻血も風邪もすべての症状を記録しておくことが大切だ。本稿では詳しく記せないが、日本の行政も司法も放射能による健康被害は、甲状腺がん以外認めない方針である。

 

 ゼロに戻された原発政策

 

 原子力発電は、「核の平和利用」の象徴であった。だが、チエルノブイリ(1986)とフクシマ(2011)によって、このまやかしは明らかとなった。原子炉の中に閉じ込められていなければならない放射能・死の灰が、全世界にばら撒かれたのである。両原発事故は、科学・技術の問題であるかのように思われがちだが、徹頭徹尾政治の問題である。国会事故調査委員会が1号機の建屋内を視察したいといったとき、東電は真っ暗で危険だからと拒絶している。だがこれはウソだった。東電は、事故の真相を隠すため現場を見せたくなかったのである。

 原発推進が国策であったことは周知のこと。そのために原発三法などといわれるもので原発立地自治体に多額の金がばら撒かれていたのも明らかとなった。フクシマは、援助されない地域だって被曝させたのだから、「立地自治体」なんていう概念が吹き飛んだはずだった。

 フクシマは「人災」である。だが誰一人逮捕されず、「立地自治体」も「原子力ムラ」も残された。国の「除染」にしても、ゼネコンに丸投げし土建会社に儲けさせるだけだった。こんな実態を福島市在住の赤間孝紀は、『人権と教育』464号の「声」欄で記している。

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 政権が民主党から自民党へ移った。首相安倍は、原発政策の継続・維持を宣言した。野田民主党も原発には引き引きの姿勢であったが、「2030年代に原発ゼロ」と一応明言していた。だが自民党総裁の安倍はちがう。野田の言をすべてひっくり返し、フクシマなんかなかったかのように振舞う。これには、原子力を世界的に推進する国際原子力機関もからんでいる。原子力マフィアは、チェルノブイリの始末と同じように、フクシマの真相を闇に葬ろうというのだろう、彼らにとって安倍晋三は、うってつけの人物にちがいない。だが、福島の地は荒れたまま残る。子どもたちの健康も侵されていく。だから反原発の運動は、これからも広がるばかりだろう。いや広げて行かねばならない。 (13226