市教委は「親に付き添う義務はない」と表明             - 白石礼史くん(さいたま市)の学習環境保障問題

  

  既報(本紙498号)のように、白石礼史くん(れいじ、自閉症、遅滞)のお父さんは、今後父親が学校に付き添うことはしないこと、そして、それにともなう学習環境の改善を求めてさいたま市教委に「要望書」(2016年5月21日付、内容証明郵便)を提出した。

 

 

    これって親の役割?

 

 

 昨年(2015)、礼史くんは、さいたま市立田島中学校の特別支援学級に入学した。そして、その4日後に両親は学校側から、礼史くんを落ち着かせるために「支援員やスクールアシスタントが不足しているため、両親のうちどちらかに手伝ってほしい」といわれたのである。小学校に通っているときにも、「付き添ってほしい」といわれたことがあったが、そのときは断わっている。しかし、今回は断り切れず付き添うことになってしまった。しかも、朝会などの朝の行事から授業が終わるまで、お父さんが終日付き添うのである。

 礼史くんはこだわりが強く、ファスナーが気になると歯でひきちぎったりすることがあり、また、食事の一部介助やトイレの介助も必要である。時には大きな声を出し、多動な面が見られたりもする。

 お父さんの学校での役割は、礼史くんの隣に座り、そのような行動が見られたときにはそれを制止することと食事やトイレの介助であった。

 また、授業中に大きな声を出したときは礼史くんを隣の教室に連れて行き、落ち着くのを待って教室に戻す。体育館での朝会のとき、そうした時は外へ連れ出すのである。さらには、休み時間もお父さんは付き添ってきたのだった。

 昨年の一時期、スクールアシスタントが配置されたことがあったが、そのことでお父さんの付き添いが軽減されることもなかったという。

 しかし、こうした役割は本来学校教育の一環として行われるものであり、それこそ学校側の役割といえるだろう。それなのに、お父さんの付き添いは1年2ヵ月もつづくことになってしまったのである。しかも、礼史くんの学習を保障するためには、付き添いを休むことはできない。自らの体調の問題もあり、これ以上付き添うのは無理と判断されたお父さんは、「実現する会」事務局と相談のうえ、6月以降は付き添うことはしないとして、礼史くんの学習環境の改善を求める「要望書」を市教委に提出したのである。

 

 

 新たにスクールアシスタントを

         配置したと市教委

 

 

 

 市教委との話し合いがもたれたのは、「要望書」提出から2週間以上も過ぎた6月9日。お父さんと「実現する会」から宮永、石川の両事務局員、それに支援してくださる会員の方3名が出席。市教委からは学校教育部指導2課杉山副参事、教職員課岡村、染谷両副参事他2名が応対した。

 この間の学校側の対応を見ると、礼史くんが田島中学校に在籍しているのは、法律的に見ても当然であること、親に学校に付き添う義務はないという当たり前のことが十分理解されていないのではないかと思われた。そこでその旨市教委に問いかけると、その通りだという。しかし、学校側からは、付き添いは強制ではなく「お願い」だったと聞いていると市教委。

 父親が終日付き添い、それが1年2か月の長きにおよぶ。いったいそんな「お願い」つてあるのだろうか。

 「今年5月に開催された学校公開に際して、その日わたしが医療機関を予約していたことから付き添えないことを学校側に言うと、『人が回せないから、予約をほかの日に変更するか、息子が利用している行動援護を申請して朝から来てもらうよう』に言われた。しかし、医療機関の予約変更が難しいことからやむなく息子を早退させるしかなかった。これが『お願い』といえるのでしょうか」とお父さんが詰め寄ると、市教委もうなずくしかなかった。

 さらには、前記の「礼史くんは、法律的に見て当然の権利として田島中学校に在籍していること」ならびに「親には学校に付き添う義務はないこと」を学校側に周知することとあわせて、この間の学校側の対応が、礼史くんのマイナス面に注目しがちであったことから、本人のプラス面に注目して評価し、家庭をも励ます方向での指導を促すことも市教委は約束してくれた。

 次いで話は、父親が6月以降は付き添わないと「要望書」に記し、そのことによる礼史くんの学習環境保障の問題に移った。市教委との話し合いの日程がなかなか決まらないため、お父さんは市教委を通じて、事前に学校側に6月以降は付き添わない旨告げていた。そして、学校側から届けられる日々の連絡力-ドからは、教員が毎時間交代で礼史くんに付き添い、前向きに対応しようという様子も見て取れた。そのことに謝意を表しながらも、毎時間、人が違うのでは礼史くんとの信頼関係をつくり上げることも、心の安定をもたらすことも難しいのではと水を向けると、市教委からは、6月6日から新たにスクールシスタントを学級に配置したとの回答があった。週4日ではあるが、スクールアシスタントがいない日や時間帯についても、遺漏のないようこれから学校側と話し合うという。

 こうして白石礼史くんの学習環境保障の問題は解決をみた。この日の話し合いを簡潔にまとめて市教委に送付した「白石礼史の学習環境保障にかんする話し合いメモ」(内容証明郵便)を以下に掲載する。今後の話し合いの前提となるものであり、参考にしていただけると幸いである。        宮永 潔

 

 白石礼史の学習環境保障にかんする

               話し合いメモ

 

 本年(二〇一六年)六月九日。白石礼史の学習環境保障について、保護者・白石里史、障害者の教育権を実現する会事務局総務宮永潔、石川愛子ならびに支援してくださる方三名と貴教委学校教育部指導2課杉山浩一郎副参事(貴職の権限代行者)、教職員課岡村洋彦副参事、染谷隆副参事他二名との間に話し合いを持ちました。今後の話し合いがスムーズに進められるよう、念のためこの日の話し合いで了解されたことを以下、簡潔に列記します。

         記

 一 礼史がさいたま市立田島中学校に在籍しているのは、日本国憲法第二六条「教育を受ける権利」にのっとり、当然の権利である旨、貴教委より表明を受けました。二 保護者には、子どもの学習環境を整えるなどのために、学校に付き添う義務などはないことを双方で確認しました。三 右二つの項目について、これまで学校側の理解が十分に得られてこなかったこと、ならびに子どものマイナス面にのみ注目するのではなく、プラス面に焦点を当て、子どもを受容し、信頼関係をつくり上げる方向での指導や家庭への対応がなされるよう、貴教委として学校側を指導するとの表明がありました。四 保護者が学校に付き添わないことによる学習環境の整備については、本年六月六日よりスクールアシスタントを一名、新たに田島中学校特別支援学級に配置したとの回答が貴教委よりありました。これについては、この間の経緯から、私どもとしては、礼史を念頭に配置されたものと思慮する次第です。また、スクールアシスタントの配置が、週四日であることから、スクールアシスタントがいない日や時間帯についても遺漏のないよう、これから学校側と相談するとの表明がありました。五 この問題の円滑な解決をみるためにも、貴教委としてこの問題について、今後とも見守っていくとの回答がありました。

 

 右、了解事項については、一言一句その通りではありませんが、その趣旨を踏まえて文章化されたものであることを申し添えます。もしこれについて重大な誤解や異議があれば書面にてお知らせ願います。

二〇一六年六月一五日

 (住所略)

 

              白石 里史

  さいたま市浦和区常盤九のI〇の一三

  ライオンズマンション浦和常盤二〇四

      障害者の教育権を実現する会

        事務局総務 宮永  潔

さいたま市浦和区常盤六丁目四の四

さいたま市教育委員会

 

教育長 稲葉康久様