これ以上高齢者いじめをつづけるな!!                  --最近の介護保険制度の見直し論議から

 今年(2016年)7月21日、マスコミは、「社会保障サービスの縮小と負担増の論議」と報じた。3年に1度の介護保険制度の見直しで、サービスを縮小させる論議が、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会で20日から本格的に始まったというものである。

 介護の必要性が低い軽度者向けの生活援助や福祉用具の貸与を保険の対象外とするかどうかが焦点という。

 安倍首相は、選挙前の6月1日、「消費税の8%から10%への引き上げを2年半先送りする」と発表した。その時、それにともなう国民負担増については二言も触れてはいなかったのである。そして、先の参議院選挙中は、「一億総活躍」「介護離職ゼロ」を声高に訴えていた。

 

 以前から決まっていた介護サービスの縮小

 

 しかし、社会保障サービスの縮小と負担増は、参議院選挙よりもずっと以前にその方向が示されていた。

 昨年6月に閣議決定された〈経済財政運営と改革の基本方針2015〉では、①公的保険給付の範囲や内容について検討したうえで適正化し、保険料負担の上昇を抑制すること。②次期介護保険制度改革に向けて、高齢者の有する能力に応じ、自立した生活を目指すという制度の趣旨や状況を踏まえつつ、軽度者に対する生活援助サービス・福祉用具貸与等その他の給付について給付の見直しや地域支援事業への移行を含めて検討を行うとしていた。

 さらに、2015年12月の《経済・財政再生アクションープログラム〉でも、軽度者に対する生活援助サービス・福祉用具貸与等その他の給付については、「給付の見直しや地域支援事業への移行、負担の在り方を含め、関係審議会等において検討し、2016年度末まで結論を得」る。そして、法改正が必要なものについては、2017年通常国会に法案を提出するのだという。

 また、今年6月、〈経済財政運営と改革の基本方針2016〉が閣議決定されている。そこでは、「社会保障分野においては、世界に冠たる国民階保険・階年金を維持し、これを次世代に引き渡す」、そのため「負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化、薬価調剤等の診療報酬および医薬品に係る改革、年金、生活保護等に係る44の改革項目について工程表に沿って改革を実行してしく」としていたのである。「負担能力に応じた公平な負担」「給付の適正化」というものの、それは介護サービスの縮小を意味するものでしかなかったということである。

 これが閣議決定されたのは、安倍首相が消費税引き上げを2年半延期すると発表した翌日のことであった。

 

 介護保険とは

 

 介護保険は2000年から始まり、まだ16年しかたっていない。

 介護給付については、市町村が3年を一括りとして介護保険事業計画を策定し、3年ごとにその見直しを行う。そして、被保険者が支払う保険料は、事業計画を実施するうえで必要な費用見込み額等に基づいて決められ、3年間を通じて財政の均等を保つ仕組みとなっている。

 保険料は、国や県、市町村などから50%、残り50%は被保険者が賄う。つまり、40歳から64歳までの人については、医療保険者が医療保険の保険料とともに一括徴収。そして、65歳以上の人は、原則として年金から天引きされることになる。

 65歳以上の人の保険料は、2000年が平均して月2000円ほどだったのが、2016年にはおよそ5800円と3倍にもなっている(厚生労働省発表)。

 90歳のわたしの母も年金から徴収され、あわせて後期高齢者保険料も天引きされている。保険料を納めていないと介護保険を利用することができない場合もあるという。

 要介護度は、日常生活などで、どの程度介護と支援を必要とするのか、身体状況や医療依存度などによって、要支援は2段階に、要介護は1~5の5段階、あわせて7段階に区分され、介護保険サービスは、「介護給付」「介護予防」「地域支援事業(2005年から)」の三つから成り立っている。

 

 2014年の改正

 

 介護保険は2014年に一度改正されている。費用負担についてみてみると、①いままで自己負担が1割だったのが、一定以上の収入がある人は介護サービスを利用したときの負担が1割から2割になり、②世帯内に現役世代並みの所得がある高齢者がいる場合、月々の負担上限が37200円から44400円になった。そして、③食費・部屋代(室料十高熱水費)の負担軽減を受ける人が、非課税世帯の中の預貯金などの少ない人に限定され、④特別老人ホームの相部屋(多床室)に入所する課税世帯の人は、室料相当の額を負担することになったのである(2015年8月1日から)。

 しかも、高齢者の預金までも費用負担の算定の対象になるという。つまり、1000万円の預金があるものには、介護保険が適用されないというのである。

 母が北海道の美幌で一人暮らしをしているときに、週に一度ホームヘルパーに清掃に来てもらっていた。そのときは、介護サービス利用料もI割の負担で済んでいた。母は年金だけの収入なので、今のところは2割負担になることはない。

 また、昨年、簡易トイレを購入したが、その時もI割の負担で済んでいた。それが、一定の収入があると2割負担になるというのである。

 そのうえ、要支援1、2の予防給付のうち、訪問介護と通所介護を2015年4月から2017年4月のあいだに、順次地域事業に移行するというのだ。そうなれば、地域によって給付のあり方にばらつきも出てきかねないとの声も上がっている。。

 

 今回の見直し

 

7月20日から始まった社会保障審議会介護保険部会では、①軽度者への支援の在り方や、②福祉用具・住宅改修などが議題に上がっている。ここでいう「軽度者」とは、要介護1、2が想定されている。

 とりわけ、ヘルパーに入浴や食事の支度、掃除などをしてもらう「生活援助」については保険の適用対象外にして、地域事業に移行することと、車いすなどを借りる「福祉用具の貸与」が焦点となっていた。これまで貸与の対象となっていた品目を大幅に減らして、残りは実費負担にするというのである。

 政府は、介護保険の制度を維持するためにといいながら、社会保障などで高齢者などにさらなる負担を強いているのだ。

 

 今年10月12日、厚生労働省は、要介護1、2の生活援助費の介護保険適用を継続すると発表した。

 14年度の法改正では、生活援助サービスをふくむ訪問介護と通所介護は、要支援1、2の人を対象に2017年4月までに市町村の事業に移行するとしていた。しかし、今年の4月現在で、全市町村の3分の1程度しか移行がすすんでいないにもかかわらず、そのうえ要介護1、2の「軽度者」まで地域事業に移行するとなると、現場が混乱するからだというのである。そして、これにかえて生活援助の報酬単価を引き上げて介護費の抑制をめざすというのだ。

 介護保険法では、介護保険者が「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保険医療サービスおよび福祉サービスに係る給付を行うために、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険を設け」ると謳われている。

 さて、この政府、厚労省の介護保険制度の度重なる見直しは、この理念に沿うものであろうか。年金法や後期高齢者保険などの「改正」案についても、高齢者に負担を強いるものになっているという。これからもこうした施策に注視していかなければならない。 

 

 佐久間 敏幸