こうして付き添いをやた                       − Bくん(さいたま市・車いす使用)の場合

 

  ここ数年、地域の通常学級就学にあたって、親が付き添うことがあたかも条件であるかのように市教委や学校側から迫られ、そんなものかと応じられた方、あるいはそんなのおかしいと思いながらもやむなく付き添うことを了承された方からの相談が、「実現する会」にあいついで寄せられています。さいたま市のBくん(筋ジストロフィ・車いす使用)の場合もそうでした。

 

  毎日2時間おきに
     学校に付き添うことに

 

 Bくんは、いまさいたま市立○小学校4年生に在籍しています。1年生の二学期までは、親が付き添うこともなく、プールも、校外学習も、マラソンも学校側で対応してくれていました。それに変化がみられるようになったのは3学期から。市内のわりと近い大宮公園への校外学習に親の付き添いを学校側から求められたのです。しかも、Bくんに対応してくれているスクールアシスタントがついているのに、何かあったら困るから付いて来てほしいというのです。やむなく、お母さんが自転車で付いていくことになりましたが、この時は何もなく、ただついて行くだけに終わりました。

 しかし、何かあったらというのはどういうことなのでしょう。本来、学校行事というのは、学校側の責任で行われるものです。当然ながらその過程で何があろうと、学校側が責任を負うべきものであることは言うまでもありません。それなのに、学校側は、それ以後も、近くの市立図書館への移動に際しても、親の付き添いを求めたのです。
 しかも、これまでは体育時は男性の、移動教室や算数のときなどは、女性のスクールアシスタントが、それぞれ1名ついていたのが。4年生になると、女性1人だけになってしまいました。そのため、学校側からは、スクールアシスタントが異性であるため、トイレの介助はできない。担任もほかの児童がいるからトイレの介助までは手が回らないといわれ、お母さんが、毎日2時間おきに学校に出向いて、Bくんのトイレ介助にあたることになつたのです。一度学校に行って家に戻ると、すぐにまた学校に取って返すことになってしまいます。これでは買い物や掃除、洗濯などの家事をする暇もありません。ちょっとした外出もできないのです。これが家庭生活を破壊するものであることを、学校側は想像もできないのでしょうか。
 それだけではありません。算数の授業では友だちと同じようにはついていけないBくんのためにお母さんは、自分でインターネットなどから取り出した学習障害児のための教材を学校に持たせていたのです。
 また、昨年まで入っていたプールの授業も、人手が足りないからと参加させてもらえず、スクールアシスタントがついているとはいえ、パソコンルームでひとり別学習をすることになりました。
 こうした生活が続く中で、疲労や心労からお母さんが体調を崩したのも無理はありません。そこで、もうこうした生活はつづけられないとの思いから両親は、「実現する会」事務局と相談のうえ、学習環境の改善を求めるのといっしょに、二学期からは付き添うことはしないと意志表明した「要望書」(7月22日付)を市教委に提出したのでした。

 

  「合理的配慮」の提供は。
        行政・学校の義務

 

 日本国憲法第26条には「教育を受ける権利」が謳われています。これは、誰にも譲り渡すことのできない国民固有の権利と言えるでしょう。その権利を具体的に保障するために、学校教育法では、第一に保護者の側に「就学させる義務」を、第二に、行政に「学校設置義務」(第38条)を課しているのです。後者の学校設置義務とは、その地域の子どもたち一人ひとりの学ぶ権利を満足させるための人的、物的教育資源を整えることを意味しています。したがって、支援員の配置をふくむ行政上の必要な配慮や支援は、行政側の責任においてなされるべきといえるでしょう。
 2014年、国連「障害者の権利条約」が、わが国でも批准されました。そこでは、「障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束する」(第四条)と謳われています。それにともなって社会・公共の側の「合理的配慮」が不可欠とされているのです。
 「合理的配慮」とは、さまざまな場面で支援を求める人には、障害があるためにこうむる社会的障壁を克服するうえで必要な配慮を、社会・公共の側が提供する義務があるという意味に他なりません。
 また、同条約では、あらゆる形態の「障害に基づく差別」を禁じていますが、右に述べた「合理的配慮」を提供しなかった場合もまた差別としています。当然ながら、教育においても、この「合理的配慮」は提供されるべきとされているのです(第二十四条)。 つまり、「合理的配慮」を受けることは、障害者にとって権利なのです。両親が市教委に送付した『要望書』に、その法的根拠として、当然ながらこうした考え方が記されていることは言うまでもありません。

 

  学習環境の改善を市教委は約束

 

 トイレ介助について、玉井副参事は、今からスクールアシスタントを変えることはできないし、新たにもう一人雇用することも予算上むつかしいとしながら、学校内でのやりくりで何とかやれるよう、すでに学校側と相談したと言います。そのうえで「安心してください」と付け加えました。
 両親は、支援員の配置をふくむ改善を要望していましたが、それは学校側が「人手が足りない」ことを理由に付き添いを親に求めていたことに起因していました。しかし、学校側できちんと対応してくれるなら、それでもいいというのが両親の立場でもあったのです。とはいえ、いくらやりくりと言っても、支援する人が入れ代わり立ち代わりしょっちゅう替るようでは、本人も混乱してしまいかねません。
 それでは困るという私たちに対して、玉井副参事は、「それは自分の経験からもよくわかる。そのようなことのないように配慮したい」と答えてくれたのです。
 そのうえで、校外学習への付き添いについての話に移りました。
 両親は、1年生のときから校外学習に付き添ってきたことから、今後のこと、とりわけ宿泊を伴う校外学習に付き添うようなことがないかと心配されていました。
 これについて市教委は、「親が付き添わないから、連れて行かないということはあり得ない」、学校側が何らかの工夫をすることで参加することは可能であるといいます。その場合でも、参加の仕方については、本人の利益が最優先されなければならないこと。そして、それを前提に学校側と両親が話し合うことも双方で了解。
 また、お母さんが算数教材を真規くん用に自作していた教材は当然ながら、今後は学校側が作ること。プールの授業についても、今後は何らかの工夫をしながら参加できるようにすることなどを確認するところとなりました。
 この日の話し合いで双方で確認したところをまとめて市教委に送付した「話し合いメモ」を、以下に掲載します。今後の話し合いの基礎とするためのもので、参考にしていただけると幸いです。

宮永 潔

 

 

 

 

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     Bの学習環境保障にかんする話し合いメモ

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 本年(二〇一五年)八月七日、Bの学習環境保障について、保護者・両親ならびに障害者の教育権を実現する会事務局総務宮永潔、佐藤努、石川愛子と、貴教委学校教育部指導2課副参事玉井康仁(貴職の権限代行者)他二名との間に話し合いを持ちました。
 今後の話し合いがスムーズに進められるよう、念のためこの日の話し合いで了解されたことを以下、簡潔に列記します。
        記
一 Bがさいたま市立○○小学校に在籍しているのは、日本国憲法第二六条「教育を受ける権利」にのっとり、当然の権利である旨、貴教委より表明を受けました。
二 算数教材を母親が作成したり、プールの時間にひとりパソコンルームで別の課題を与えるなどは、本来のあり方ではなく、教材は学校が作成すること、またプールの授業については、工夫しながら参加できるように努めると貴教委より表明がありました。
三 トイレ介助については、「二学期からは介助しない」との保護者の意思表明を受けて、貴教委としては今から支援員を変えることはできないが、校内でやりくりすることで母親が学校に来なくても済むようにすでに学校側と打ち合わせたので、これについては、貴教委より「二学期からはご安心ください」との回答がありました。さらに、支援員が頻繁に変わるのでは、真規が混乱するとの指摘に対して、玉井副参事より、自らの経験を踏まえて、それについては配慮したい旨お話がありました。
四 Bの校外学習に一年生の時から母親が自転車で付き添うよう学校側から求められてきたことや、今後に予定される泊をともなう校外学習について、今後も付き添いが求められるのではないかという保護者の危惧にたいして、付き添わないから連れて行かないということは「あり得ない」。学校側が何らかの工夫をすることでそれは可能であると貴教委から返答がありました。
 なお、参加の仕方については、本人の利益が最優先される方向で行なわれるべきであり、それについては学校側と両親が十分話し合って決めることも双方で確認したところです。
五 この問題の円滑な解決をみるためにも、貴教委としてこの問題について、今後とも見守っていくとの回答がありました。
 なお、今回の話し合いを通じて、来年度以降のスクールアシスタントの選考にあたっては、本年度の教訓を踏まえ、当然ながらご配慮いただけるものと私どもとして思慮している次第です。

 右、了解事項については、一言一句その通りではありませんが、その趣旨を踏まえて文章化されたものであることを申し添えます。もしこれについて重大な誤解や異議があれば書面にてお知らせ願います。

 二〇一五年八月一三日
   (住所略)
                               両親署名


                   さいたま市浦和区常盤九・一〇・一三
                   ライオンズマンション浦和常盤二〇四
                       障害者の教育権を実現する会
                         事務局総務 宮永  潔
さいたま市浦和区常盤六丁目四の四
さいたま市教育委員会
教育長 稲葉康久様